魚も野菜も一緒に育つ!アクアポニックス(Aquaponics)の仕組み

アクアポニックス(Aquaponics)って聞いたことありますか?
アクアポニックスとは簡単に言うと、魚と野菜を同じ生態系の中で育成するシステムのことを指します。
私は数年前、美容院で読んでいた「ポパイ」という雑誌でこのアクアポニックスの存在を知り、興味を持ったんですね(`・ω・´)ゞ
そしてはるばるオーストラリアへ赴き、アクアポニックスを実践している農家さんの元で1か月間研修をさせてもらいました。

今回はオーストラリアで1か月間アクアポニックスを学んできた私が
アクアポニックス(Aquaponics)についてとそのメリット・デメリットを紹介します(・∀・)

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アクアポニックスとは

アクアポニックスとは
魚の養殖や水生植物の栽培を意味するアクアカルチャー(Aquaculture)
土なしで植物を砂や小石または水のみで育てる水耕栽培、ハイドロポニックス(Hydroponics)を掛けあわせたものです。

簡単に言うと、
アクアカルチャー = 水槽
ハイドロポニックス = 植物工場
というイメージで大丈夫です(・∀・)

金魚など魚を飼ったことのある人は御存じだと思井ますが、
水槽って水を入れ替えたり掃除をしたりして、魚のために水を綺麗に保ち続けなければいけません。
要はメンテナンスが大変なんですね。

ハイドロポニックス、いわゆる水耕栽培の場合も同じく植物の成長のためには水を入れ替える必要があります。

このアクアカルチャーとハイドロポニックスでは廃棄される水を循環させるシステムがアクアポニックスなのです。

アクアポニックスの仕組み

アクアポニックスでは魚の泳ぐ水槽の水を少しずつ植物の育つベッドへ流し込みます。
魚の排泄物の溶けた水がパイプの中を通って植物のベッドに流れます。
そうすると、ベッドに敷かれたクレイボール(粘土が固められた小さいボール状の石)に住み着くバクテリアが排泄物に含まれるアンモニアを、植物が吸収できる硝酸態窒素という形に分解することで植物がそれを吸収できるようになり、成長します。


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もっと詳しく言うと、
アンモニアをニトロソモナス(亜硝酸細菌もしくはアンモニア酸化細菌ともいう)が酸化させて亜硝酸にし、その亜硝酸をニトロバクター(硝酸細菌もしくは亜硝酸酸化細菌ともいう)が酸化させて硝酸に変えるのです。

アンモニア塩
↓酸化 by ニトロソモナス
亜硝酸塩
↓酸化 by ニトロバクター
硝酸塩

そしてバクテリアによってアンモニアが取り除かれた水がまた水槽の中に戻って循環するのです。

このアクアポニックスの循環において最も重要なのがこの硝化細菌と呼ばれるニトロソモナスとニトロバクターという働き者のバクテリアの存在。
そしてそれらが棲み付くクレイボールの存在です。

クレイボールの特徴は多孔質構造
つまり穴が多くてバクテリアが棲み付きやすい素材なんですね。
多孔質というのは細孔が非常にたくさんあるという意味で、
活性炭やゼオライトなんかも多孔質材料の1つですね。

水槽を購入すると活性炭がついてきたりするのは、排泄物の溶けた水を活性炭に棲み付く硝化細菌によってアンモニアを酸化し、魚に害のない環境を作るためだったんですね!(水槽買ったことないけど)

植物の成長に必要な窒素は形を変えて生態系を循環しているわけですが、
アクアポニックスは生態系において重要な窒素循環の縮図とも言えるでしょう。

アクアポニックスのメリット

水やりが要らない

アクアポニックスでは水を循環させるだけなので、循環システムができてしまえば基本的に新たに水を加える必要がありません。
そのため、アクアポニックスはオーストラリアなど水の少ない地域で普及が進んでいます。

化学肥料・農薬も要らない

アクアポニックスは無農薬かつ化学肥料を使用しません。
完全オーガニックです。
農薬あげちゃうとおさかなさん死んじゃいますから(^_^;)

よく勘違いされがちですが、水耕栽培いわゆるハイドロポニックスはオーガニックではありません
ハイドロポニックスは液肥ガンガン入れます。
それも成長を早めるための化学肥料です。

ハイドロポニックスとアクアポニックス、どちらが環境にいいかは自ずと解ると思います。

アクアポニックスのデメリット

循環の適切量を考慮する必要がある

アクアポニックスにはたくさんのコンポーネントがあります。
例えば。水槽の水、水の流量、魚の総重量、魚の餌の量、栽培する植物の大きさや数、アンモニア、亜硝酸、硝酸の濃度などです。
こうしたコンポーネントがどのくらいの割合でならシステムがより良く循環するのかという具体的な数値は調べたらわかるのですが、実際に作ってみると難しいです。
システムが機能しないと魚が死んでしまったり植物が枯れてしまったり…
なぜ魚が死んでしまうのか、適宜測定・調査し、原因究明して改善していく必要があります。

しかし一度システムの循環がうまくいけば、あとは微調整のみで済み、
植物もグングン育ちます。

インフラ・資源のメンテナンス

アクアポニックスにおいて、基本的に水は頻繁に足す必要はありませんが、エアレータのための電力や魚のエサを常に供給する必要があります。

もちろんただ供給すればいいというものでもなく、量を見極めることが大切です。
エアレータの電気は調整がさほど難しくはありませんが、魚のエサはどれだけ与えればいいのか、適切な量を見極める必要があります。
エサはやり過ぎてはいけないし、足りなくてもいけません。

例えばエサが多く、魚の排出する糞尿に含まれるアンモニア塩が、硝化細菌が分解できる分を超えてしまうとどうなるでしょうか?
魚にとって毒であるアンモニア塩がまた水槽に戻ってしまい、水質が悪くなり、終いには魚が死んでしまう要因となります。

エサの適切量がわかってきたら自動エサやり器を使うのも1つの方法ですね。

また、最初の数カ月は少なくとも週に1回は水質検査を実施することが推奨されています。
水質以外にも、循環の過程で水量が減ってくることもあるので水かさが減ってきたと思ったら必要の高さまで水を足します。
水槽の底に固形物が溜まってきたら清掃をする必要もあります。

植物においても2週間に1回は植物の根が健康であり、クレイボール以外に固形物が絡んていないことを確認します。

硝酸態窒素の供給過剰

アンモニア塩が亜硝酸塩、亜硝酸塩が硝酸塩になるわけですが、
これらはすべて窒素の一種の形です。
植物に吸収される最終形である硝酸塩はほぼ硝酸態窒素のことを指します。(厳密に言うと別物です)

農業界隈では有名な話ですが、
硝酸態窒素はヒトや動物が摂取すると酸素欠乏症ニトロソアミンという発ガン性物質を生じる問題があります。

硝酸態窒素は植物の体内に吸収されると光合成によってタンパク質に変わります。
しかし硝酸態窒素が多すぎてタンパク質にならずそのまま残ってしまうとヒトが食べた後に胃の中の腸内細菌が亜硝酸に戻し、動物性タンパク質に含まれるアミンと結合するとニトロソアミンという発ガン性物質となってしまうのです。

化学肥料が良くないと言われるのは、
植物がそのタイミングで合成できないほど窒素分が過剰に含まれていて、結果的に残留した硝酸態窒素をたくさん生み出し環境汚染を進めているからなんですね。
有機肥料と比べても化学肥料とは硝酸態窒素の生産量に違いはほとんどないと言われています。
つまり、アクアポニックスにおいても植物に硝酸態窒素が残留していないとは言い切れないのです。

ちなみに硝酸態窒素が多いかどうかの見分け方として、葉物野菜の場合は緑が濃いかどうかで判断できます。
濃厚な緑色をしていたら、湯がくことで軽減させることが可能です。 

アクアポニックスはまだまだ最近の栽培技術なので、硝酸態窒素の残留量といったことは表立って研究されていない可能性があります。
アクアポニックスで育ったオーガニックだからといって安全であるという保証はありません。

土から得られる栄養素が不足している可能性

アクアポニックスは土ではなく、アンモニアを含む水とクレイボールや小石といった材料で植物を育てます。
となると、本来土から得ていた何かしらの栄養分が欠乏している可能性も否めません。

例えば、アクアポニックスでは窒素循環が特徴ですが、
植物は生長段階によって必要となる栄養素が異なります。
詳しくはこちらの記事に書いています。

簡単に言うと、植物が窒素分を最も必要とするのは体を大きくするための生殖生長期です。
人間で例えると、子どもから大人になる時期ですね。
私達が食べている葉物野菜のほとんどは植物が未熟の状態です。
アクアポニックスで育てられると言われている植物も、窒素分が必要となる葉物野菜が多いのはそのためかと思います。

しかし栄養生長期に多く必要となるリン、
その他カリやミネラルといった栄養分、私達の目には見えない大事な栄養分がアクアポニックスによって十分野菜に供給されるのでしょうか?

そう考えるとやはり
土の上で元気に育った旬の野菜が食べたいと思うのは、
自然の摂理かもしれません。

まとめ

アクアポニックスは生態系の窒素循環を理解するモデルとしては素晴らしいシステムだと感じます。
しかし、アクアポニックスで育った野菜や魚がヒトの健康に影響がないかはまだまだ不明なので、自分で判断していくしかないのかなと思います。

商業的には日本は比較的水資源が豊富なのでそこまで普及しないかもしれません。
しかし今後、砂漠化の進んでいる地域や、食糧不足が問題となっている地域でアクアポニックスが活躍していくのではないかと思います。